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熊本の妖怪
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鼻延び【はなのび】:熊本県玉名郡に伝わる。暗くなりかける頃、魚売りが夫婦坂で若い女に会った。女が煙草の火を欲しがるので、煙管を差し出すと、女の鼻がにゅーっと伸びた。驚いて魚笊を捨てて家に逃げ帰ると、嬶に化け物に会ったことを話した。すると嬶の鼻もにゅーっと高くなった。魚売りは驚いて気絶してしまい、気がつくと夫婦坂で倒れていて、夜が明けかかっていた。(能田太郎『昔話研究』一巻五号「玉名郡昔話(四)」)
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/246...

「嬶」は「かかあ」と読みます。なんだか嬶の字面から膨らませた話のような臭いがプンプンするんだけど!

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熊本の妖怪
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さけん松【さけんまつ】:熊本県天草の御領と佐伊津の境に松があり、そばを通る人があると大きな足がぶら下がって驚かせたという。ある男がこの足を退治しようとしてぶら下がった足を刀で斬った。その後、自分の家の下男や乳母に出会ったので大きな足の話をしたところ、彼らは「これ位大きかったか」と言って自分の足を見せた。見る見るうちに大きくなったそれは松からぶら下がっていた大足とそっくりだった。男は化け物に降参し、翌日御馳走を持って松に供えた。一説によると、この松は御領の芳證寺にあるとも言う。「さけん」は「境」が訛ったものだそうな。

今回の妖怪はこちらのサイトの記述を参考にしています。
http://ariadneito.web.fc2.com/top/gojyuu...

http://www10.plala.or.jp/cotton-candy/mo...

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熊本の妖怪
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ホグラ:天草島でいう。河童の刧を経たもので、山に入ってクロソギという木の切株に棲むという。(『民俗語彙』)

ホグ・・・というと熊本や長崎、福岡などの方言で穴があく(あける)という意味があります。「そこを錐でほぐって=そこを錐で穴をあけて」・「靴下がほげた=靴下に穴があいた」という風に。ホグラに穴を開ける性質があると仮定してみたところ地面に穴をあけるモグラを連想したので、モグラと河童を掛け合わせた外見にしてみました。地面に盛り上がったモグラ道は木の根の盛り上がりに見間違えられることもあるし、木の根は幹に通じるという事で切り株に住まうと考えられるようになったとか・・・まぁ、真面目に妖怪を研究してる人には飛躍しすぎだと言われそうですけども。


あと、クロソギが特定の種類の樹木名の方言なのか、ただ切り株につけられた名なのか判らないのが気にはなります。描き上げておいて何ですが、素直に切り株とゲゲゲハウスを掛け合わせたような住処に老いた河童が暮らしてる絵を描いた方が良かったと思ったりも・・・。

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明神池の女河童【みょうじんいけのおんなかっぱ】:明神池には仲の良い男女の河童が暮らしていたが、男の河童は過ぎた悪戯を繰り返していた為に神の怒りに触れ遠くの池へと追放されてしまう。その事を知らない女の河童は、池の中の石の上で彼の帰りを待ち続けた。桜の咲く春から木枯らし吹き荒む冬になっても彼は帰ってくることはなかった。さらに年月が経ち、ついには女河童の姿も見られなくなったが、現在も残っている彼女が座っていた石の事を河童石と呼ぶようになったという。(明神池名水公園の看板の文面より)


明神池名水公園には女河童の像があります(作られたのは平成9年と新しいけど)。ポーズも岩の形状もそれをベースに描いています。

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(↑)ちなみにこんな像


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濡女【ヌレオンナ】:阿蘇では、ヌレオンナが各地に出るという。水のほとりに現れる濡れ髪の怪女で、人間に取り憑いて血を吸うと言われる。中年の女で蛇身だと考えられている。特に栃木温泉の対岸の薬師堂に出るのだという。(丸山学・熊本民俗民族学会『みんぞく』通巻十四号「山の神その他」)
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/220...

鳥山石燕タイプだと人間の頭部に蛇体、それに人間の腕が生えてるんだけど、人間の頭部と蛇体のみの佐脇嵩之タイプのほうで。

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熊本の妖怪
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ユキゴジョウ:熊本県人吉市に伝わるユキゴジョウは雪女のことで、雪が降り始めると、どこからかやってきて、吹雪の中をさまよっているのだという。(成城大学民俗学研究所『伝承文化』通巻十号「熊本県人吉市調査報告」)
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/134...

雪の中をさまよってるという事で狂い女っぽく。剃髪頭にしたのは松井家に伝わる「百鬼夜行絵巻」に描かれている雪女が剃髪頭(尼さん?)だったのが印象に強かったから。

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(↑)ちなみにこんな感じ。

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熊本の妖怪
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いっちょ目【いっちょめ】:熊本県玉名郡に伝わる。甘藷を掘って馬に積んで帰る途中いっちょ目に男が襲われた。逃げた男は小屋に隠れ、追跡を諦めて寝てしまったいっちょ目に小便をかけると、いっちょ目は夕立が降ってきたといい、屁をひると雷が鳴っているといった。最後には小屋に火をつけられていっちょ目は焼き殺される。(関敬吾『旅と伝説』九巻四号「牛方山姥の昔話―逃鼠昔話の一類型として―」)
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/123...

いっちょ目タン、なんてお馬鹿な子・・・!!

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『旅と伝説』九巻四号が刊行された昭和11年(1936年)当時の玉名郡は玉名市と荒尾市(ピンクの間の二つの地域)も含んで玉名郡なんですよね・・・。現在と本が書かれた当時では微妙に範囲が食い違うという。とりあえず熊本の妖怪の絵の下に地図をつけてはいるものの、現代の地域分けで色付けしてるのであまりアテにはならないかも。分離やら合併、時には地名変更もあるせいでややこしい。

パラパラ地図:熊本県
http://mujina.sakura.ne.jp/history/43/in...
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轆轤首【ろくろくび】:此頃絶岸和尚といふ僧西國行脚の折から肥後へ行て、しころ村といふ所に一宿せられしに軒あばらなるかり枕、風冷しく吹落て夢もまどらかならざりければ夜更まで念佛稱名して居たまひしに、うしみつばかりに其屋の女房の首むくろよりぬけて、窗の破れより飛出ぬ。あやしと思ひて念頃に見れば其首の通ひしあとに白きすじのやうなるもの見えたり。是こそ轆轤首よとおそろしく、誠に過去の業因までおしはからるゝに夜明かたになりて其すじ動くやうにて又もとの處より彼首かへり、につこと笑ふやうにておのがふしどに入ぬ。夜明て其女房を見れば、首のまはりに筋あるやうにて別のかはりなし。(山岡元隣『古今百物語評判』)

首が伸びるタイプの轆轤首ではなく、首が抜け落ちる飛頭蛮タイプの轆轤首ですね。それにしても、泊めてもらってる立場のくせに、風うるさいし寒いし寝られないので夜更けまで念仏唱え続けるって、絶岸和尚さん迷惑すぎる。家の女房がろくろ首になったのは、「うるせークソ坊主、夜中に騒音たてんじゃねー!眠りたい人間もいるんじゃー!」という無言の抗議。多分そう。きっとそう。

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アリエ:明治9年6月17日の『甲府日々新聞』にこうある。

肥後国青鳥郡の海に4本足の奇怪なものが現れ、夜になれば往来へ出て鱗を光らせながら歩くようになった。怪物は通る者を呼び止めるが、誰も寄り付こうとはせず、やがてその場所に人が寄り付かなくなった。旧熊本藩士柴田某が正体を見届けんと出向き、遭遇した怪物は「我こそは海中鱗獣の首魁にて名はアリエ」といった。アリエは六ヵ年の豊作とコレラの流行を予言し、難を避けるには自分の姿を描いたものを置いて信心するべしと告げて海に姿を消したそうな。同年9月30日の『長野新聞』にもこの記事が引用されているが、肥後に青鳥や青沼と称する地名はないので、妄説であると切捨てている。

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↑ちなみに新聞記事のアリエさんの図

四本足の獣とあるので、トドの頭部を人間の頭に置き換えたものとして描きました。「鱗光らせ」を「燐光」のイメージに置き換えてるけど気にしない。

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ガゴウゴジョウ:熊本県人吉市に伝わる。ガゴウゴジョウは山から来るお化けである。姿、形や大きさなど、詳細は不明であるという。(成城大学民俗学研究所『伝承文化』通巻十号「熊本県人吉市調査報告」)

「ガゴ」は妖怪を意味する言葉らしいです。こちらのサイトが参考になるかと思います。

「ガゴ」ノート
http://www4.ocn.ne.jp/~kitaz/documents/y...

人吉にはユキゴジョウという雪女の妖怪がいるそうです。「ユキ」は「雪」、「女」を「ゴジョウ」とするならば、ガゴウゴジョウとは女のガゴではないでしょうか。子供を怖がらせる言葉の中に名前のみが現代に伝わっていて、妖怪としての外見や性質は不明であることから、女性の特徴を持つ曖昧なものとして絵にしました。本音を言うと、山姥や山女の類として描くのが正解であろう気もします。

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