Entries

Icon of admin
AMAKOMA-YA
熊本の妖怪
20240301181921-admin.png

 二の坂の道筋ん山に「おまん」ちゅうこっけ狸が棲んどったげな。人間ば騙くらかすこた朝めし前、また歌が上手で人ばからこうては一人で?いや一匹で面白がっとった。噂ば聞いた人びとは、朝夕薄暗いうちゃみんな怖がって、こん峠ば越ゆるもんなおらんじゃった。
 ある日のこと、村の庄屋どんが、まだ明けきらん薄暗か中ば愛馬に打ちまだがり、気に入りのお供えば一人従えて狩に行く途中、今日の獲物ばあれこれ想像しながる二の坂ば登っとらしたげなたい。
 明けん明星が姿ば消すころ、坂ん途中の「下駄取り坂」ちゅうて、雨上がりにゃ下駄履いて通ればおっ取られるごつ粘り気ん強か赤粘土の坂道ばようよう登りきったとき、白々明けかけた朝露の中ば、庄屋どん方の下女がゼーゼー、ゼーゼー息ば切らしながる後ろから追いかけてきて、「旦那さん、旦那さん、奥さんが子供ん生まるっち騒動しとらすで、狩りは止めて早う帰って下はりまっせ」「なんてやッ、奥がお産を?……」突然のこつで庄屋どんな一瞬めんくらわしたが……、はて、今ごろ奥が子供ば産むはずはなか……こらおかしかぞ?ハハァ、こやつは「おまん狸」の仕業じゃな」瞬時に気付いたばってん、さすがは庄屋どんたい、顔には出さずいきなり馬ん上から腰の大刀を抜く手も見せずに下女を目がけて切り払った。哀れにも「おまん」狸の首はころりと落ちて泣き別れ。
 それからは、二の坂にゃ人間ば騙す狸は出らんごつなって、村人は安心して夜道でんこん坂ば越ゆるごてなったちゅう話たい。


水俣市史「民族・人物編」より
http://www.city.minamata.lg.jp/976.html
Icon of admin
AMAKOMA-YA
愛知おもてなし妖怪隊
20240301181625-admin.png

twitterでやっている伝承妖怪お題絵・・・ではありません。番外編。

田幡の雷獣:「愛知おもてなし妖怪隊」の田幡の雷獣の項目参照のこと。

http://aichiyoukwaitai.web.fc2.com/

昔に描かれた雷獣の絵はいくつかあれど、これが一番ブサイクな気がするのでこれをベースに描きました。なにせ肥溜めに落ちて捕まるような子だし。

20240301181625-admin.jpg
Icon of admin
AMAKOMA-YA
熊本の妖怪
20240301181446-admin.png

 むかし、古里の田頭に「こんじんどん」ちゅう神さんがおらったげな。こん神さんなあんまり目立たんじゃったばつてん、いさぎゅう運の良うなる神さんで、お参りすれば金がようぬさるちいわれとった。
 ある日、村ん衆が寄り合いばして村ん中に農道ば造るごて決めた。ところが具合の悪かこてな、そん道ば通すところに金神どんが座っとらすもんじゃっで、ほかんとこれ移さんばんごつなったったい。金神どんな石でできとったで、村ン長老どんが代表で金神どんにお願いばせらしたげな。
 「金神どん、金神どん、村中で話し合いばして、こげ農道ば造るごつ決まったで、ほかんとげ移ってもらわんまんばってん、移ってよかれば軽うならんな。移るごたなかなら重うならんな」と頼まったちたい。そしたら、いつの間にか軽うならしたげな。 お陰で何か月か経って素晴らしか農道が出来上がったそうな。
 金神どんば移したところは石で囲み、回りに南天の木ば三本植えて、村中で祀ったそうたい。なして三本植えたか、その訳は誰も知っとるもんなおらんじゃった。また、そん訳ば詮索するもんな銭のぬさらんごつなるち言われ、尋ぬる者なおらんじゃったそうじゃ。
 今じゃ南天が何本も生えており、石も無くなってしもうたので、どれがどれだかわからんごつなってしもうたたい。
 (注)ぬさる……授かるの意

 
水俣市史「民族・人物編」より
http://www.city.minamata.lg.jp/971.html


この「金神どん」というのは元は陰陽道の金神のことだったと思うんですよね・・・。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E...

それが信仰が失われていくうちに名前が縁起がよさそうなので性質が変化した挙句、このような民話として残ったのではなかろうか、と。なので、既存の金神の絵をトレースして福の神っぽい要素を付け足して改変、性質の変化と朽ち果て忘れられていくさまを描いています。

20240301181446-admin.jpg
Icon of admin
AMAKOMA-YA
伝承妖怪お題絵:第30回
20240301181312-admin.png

ドウサイ:岐阜県大野郡丹生川村に伝わる。ドウサイとは蟇のこと。山小屋で夜を明かす杣人たちの所に、行灯の灯で糸車を回す美しい女に化けて現れたという。行灯を鉄砲で撃つと、目に弾が当たったドウサイが死んでいたという。(新田貞子『ひだびと』四巻六号「飛騨の昔話と傳説 丹生川村の昔話」)

twitterでやっている伝承妖怪お題絵の6月のお題。