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熊本の妖怪
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轆轤首【ろくろくび】:此頃絶岸和尚といふ僧西國行脚の折から肥後へ行て、しころ村といふ所に一宿せられしに軒あばらなるかり枕、風冷しく吹落て夢もまどらかならざりければ夜更まで念佛稱名して居たまひしに、うしみつばかりに其屋の女房の首むくろよりぬけて、窗の破れより飛出ぬ。あやしと思ひて念頃に見れば其首の通ひしあとに白きすじのやうなるもの見えたり。是こそ轆轤首よとおそろしく、誠に過去の業因までおしはからるゝに夜明かたになりて其すじ動くやうにて又もとの處より彼首かへり、につこと笑ふやうにておのがふしどに入ぬ。夜明て其女房を見れば、首のまはりに筋あるやうにて別のかはりなし。(山岡元隣『古今百物語評判』)

首が伸びるタイプの轆轤首ではなく、首が抜け落ちる飛頭蛮タイプの轆轤首ですね。それにしても、泊めてもらってる立場のくせに、風うるさいし寒いし寝られないので夜更けまで念仏唱え続けるって、絶岸和尚さん迷惑すぎる。家の女房がろくろ首になったのは、「うるせークソ坊主、夜中に騒音たてんじゃねー!眠りたい人間もいるんじゃー!」という無言の抗議。多分そう。きっとそう。

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伝承妖怪お題絵:第12回
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煤け提灯【ススケジョーチン】:新潟県に伝わる。暑苦しく、雨の降る晩に、火の玉がフワリフワリと飛び回る。葬式の時の湯灌で使った湯の捨場から飛び出すという。(『高志路』五巻十一号「地言葉と農民生活(三二)(送葬篇)」)

twitterでやっている伝承妖怪お題絵の12月のお題。「煤け提灯」という名は、煤けた提灯越しに見えるようなぼんやりした明るさの怪火ゆえなのだと解釈しました。提灯模様は必要ないと思いましたが、名は体を表すということで描き込みをば。

ただ困ったのが湯灌の湯の捨て場。ざっと検索にかけたところ、床下などの日のあたらない所に捨てるとあるのですが・・・。これって一般家庭の話かな?怪火が発生するほどとなると、日常的に湯が捨てられていた、すなわち寺の一角に捨て場があるものとして描いています。剃った毛髪も一緒に捨てられてる、みたいな感じで。
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伝承妖怪お題絵:第11回
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サンタツ:和歌山県伊都郡に伝わる。深山に棲む魔物であり、鼬の類であるともいう。猫に似て尾が長く、畑の茄子を取りに来るという。(高瀬敏彦『郷土研究』四巻一号「紀州伊都郡俗信」)

twitterでやっている伝承妖怪お題絵の11月のお題。妖怪の川獺の有名な絵のように、「おまえのツラのどこが川獺やねん」みたいなアレンジを加えたくもあったのですが、結局は普通に尾が長いイタチみたいに描きました。9月のお題の布がらみをカワウソとして描いちゃったので差を出すのに少々困ったという噂。イタチ・オコジョ・テン・カワウソって身体の大きさは別として見た目が似てるんですよね・・・。
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画像妖怪お題絵:ふたつめ
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画像妖怪お題絵とはコチラをどうぞ。
http://yokaidoyukai.ho-zuki.com/tutomu/t...

アゴの目さん【あごのめさん】:元々は眉間に目がある普通の一つ目妖怪だったが、蕎麦の食べ方のマナーがなっとらんという咎で権現様によって目をアゴに移された。熱い蕎麦を食べると文字通り目の前を熱い麺が通ることになるのでとても食べにくい。


(↓)ここから下は補足。
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ある国に眉間から額の位置に大きな一つ目を持つ妖怪がいたそうな。
彼は蕎麦屋に立ち寄ると、熱々の蕎麦を五杯も六杯も平らげる。
その食べっぷりは気持ちよかったが、食べ方はせっかちで品が良いとは言えないのは誰しもが思うところであった。

ある時、一つ目の男は権現様と蕎麦屋で相席になった。

一つ目の男はいつものごとく蕎麦を注文しては啜っていたが、そのあさましい食べっぷりを見かねた権現様は「もう少し落ち着いて食べたらどうか」と言った。

「いやいや、あっしは蕎麦が大好きでねぇ。いてもたってもいられないんですよ。」蕎麦の先っぽを口の端から見せ、汁を撒き散らしながら男は答えた。そして食べ続けた。

権現様の堪忍袋の緒が切れた。
「そうか、そんなに蕎麦が好きなら、食べる時にもっと蕎麦が目に映るようにしてやろう。」

権現様がそう言うと、男の一つ目が顎に移動した。


それ以来、男は熱々の蕎麦をかきこむことは出来なくなった。なにせ、箸で蕎麦を口に持っていくと、文字通り目の前を蕎麦が通るのだ。熱気が目玉にしみる上、熱い麺や汁が飛んで大きな一つ目に入ると大事だ。幾度かの悶絶を経験したあと、一つ目の男は蕎麦を啜らず、ゆっくりと上品に食べるしかなくなった。

それでも蕎麦屋に出没し続けた彼は、いつしか「アゴの目さん」と呼ばれるようになった。ちなみに妖怪のくせに食べた分の御代はきっちり払っていく上に狐狸のように葉っぱに変わることもなく、害もなさないので蕎麦屋の主にとっては上得意だったそうである。


・・・という作り話でござい。
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画像妖怪お題絵:はじめ
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画像妖怪お題絵とはコチラをどうぞ。
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猪口九鬼【ちょこくっきー】:近くに捕食動物の気配も無いのに家畜が突然恐慌状態に陥る事があるが、それはこの妖怪が姿を消して追い立てているからという話がある。特に薩摩藩の豚の飼育場に現れるとされ、猪口令糖を細かく砕いたものを混ぜた乾蒸餅を供えると暫く現れなくなるという。


(↓)ここから下は補足。
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何かを追い立ててるポーズに見えたので家畜を追い立てる妖怪という設定にしました。「家畜の名前」と「鬼」を含めた駄洒落で思いついたのがコレでございます。猪=豚ね。説明文はクッキーの漢字がわからなかったので乾蒸餅(ビスケット)としています。どうでもいいけどクッキーとビスケットの分け方は日本のローカルルールみたいですね。


(↓)ここから下は脱線。
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(↑)国立歴史民族博物館の「百鬼夜行図(狩野洞雲画)」の彼は虎の尻尾が。
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(↑)東京大学の「百鬼夜行図(土佐行秀画 蔭山広迢模写)」の彼は腰布に葉っぱをつけていたり、片方の足と背中が獣の毛のようになっていたりと、見るからにエピソードがありそうな感じ。
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(↑)国際日本文化センターの絵巻物データベースで見ることの出来る「百鬼夜行図・下巻」の彼は鼻の穴だか口だかわからん冴えないお顔。ついてるのは犬の尻尾?
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(↑)国際日本文化センターの絵巻物データベースで見ることの出来る「土佐光起 百鬼夜行之図」の彼はどことなく外人っぽい。
http://kikyo.nichibun.ac.jp/emakimono/im...


「妖怪絵巻」にも彼はいるし、
http://kikyo.nichibun.ac.jp/emakimono/im...
「化物婚礼絵巻」にも鼻が短いバージョンの彼がいますな。
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それだけ描かれてなんで名前も性質も残ってないんだろう。
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アリエ:明治9年6月17日の『甲府日々新聞』にこうある。

肥後国青鳥郡の海に4本足の奇怪なものが現れ、夜になれば往来へ出て鱗を光らせながら歩くようになった。怪物は通る者を呼び止めるが、誰も寄り付こうとはせず、やがてその場所に人が寄り付かなくなった。旧熊本藩士柴田某が正体を見届けんと出向き、遭遇した怪物は「我こそは海中鱗獣の首魁にて名はアリエ」といった。アリエは六ヵ年の豊作とコレラの流行を予言し、難を避けるには自分の姿を描いたものを置いて信心するべしと告げて海に姿を消したそうな。同年9月30日の『長野新聞』にもこの記事が引用されているが、肥後に青鳥や青沼と称する地名はないので、妄説であると切捨てている。

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↑ちなみに新聞記事のアリエさんの図

四本足の獣とあるので、トドの頭部を人間の頭に置き換えたものとして描きました。「鱗光らせ」を「燐光」のイメージに置き換えてるけど気にしない。

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